森の中の静寂
道なき道を等高線が書かれた地図を見ながら歩く.
先日初出勤で, さっそく調査に行った. といっても私は付いていくのでやっと. 林道の脇に車を停めてさぁ出発. どこに向かうのか と思う間なく, 思いも寄らない所から森の中に入っていく. 森林官はGPSと地図とを照らし合わせながら進む. 沢を渡り, 伐採された木を跨いで, 地図上の印と現場の木に付いている印を確認していく.
当然, 印は間隔をとって付いている. その点と点, 木と木の間を森林官ともう一人ベテランの元営林署員が繋いでいく. 私にはどうやって点と点が結べるのかさっぱりわからない.
遠くで熊の鳴き声がしていた. 近くに熊の糞があった. 杉の木には熊が引っ搔いた跡が残っていた. 鈴の音と, 人の声と, 虫よけの蚊取り線香のにおいとで熊は現場を去っていったのか. 熊の鳴き声は, もしかすると人間がいるぞ!と仲間に伝えていたのかもしれない.
針葉樹と落葉樹の森の中, 鳥の声とブンブンうなる虫の音, 私たちが踏みしめる木や草の音, 沢のせせらぎ, まさに自然の中. 恐怖感は全くなかった. むしろ気持ちはとても穏やかだった. その場では人は侵入者であるけれど, 森はだまって私たちを受け入れてくれているように感じた.
≪もりのなか≫という絵本を思い出した. お話は一貫して静寂さを漂わせている. 主人公の少年はラッパを吹くし ほかの動物たちも歌ったり手をたたいたり吠えたりしている. 皆がそれぞれの表現方法で楽しんでいる. ウサギは何もっ声を出さなかったけれど, そのことを誰も咎めたりしない. 少年の傍に静かに立っていることがウサギの表現方法だったのだろう. そして私たちは鈴を鳴らしている. 森の中は静寂 のままだ.
マリー・ホール・エッツ え
まさき るりこ やく
福音館書店
もうすぐ梅雨 . 若干湿度が上がってきているようだ. 森の中はフィトンチッドの香りであふれている. だから穏やかな気持ちになっているのだろうか.
帰り道, ふと見上げると, 鉄塔に電線がなかった. どうやら鉄塔の交換のため新しい鉄塔を立てているようだ. 電線の無い鉄塔 初めて見た.
鉄塔の脇にある電線は,
古い鉄塔に付いているもの.
新しい鉄塔が全部建ったら, お引越しだね.
面白い発見もある, 道なき道を歩く仕事.
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